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菊池研究室
(言語情報科学)

#ことばとコミュニケーションの情報科学

日常の会話やことばのプロフェッショナルのスキルなどの科学的な探求、AIやVRなどの技術の基礎や応用など。未来をデザインする研究者集団です。



研究について

所祭委員:研究内容について詳しく教えてください。

菊池先生: 言葉を対象とした研究をしています。言葉を対象とした研究は古くから行われていますが、菊池ゼミではコンピューターサイエンスを中心に言葉のメカニズムにアプローチをしています。コンピューターサイエンスは、広くいうとスマホやパソコンなども含めたインターネットを成立させている技術です。

ゼミ生A: 個人的に一番しっくりくる考え方は予測変換などの例です。これもある意味コンピューターサイエンスによる言葉へのアプローチの一つだと思います。

所祭委員: ゼミに所属している学生が具体的にどのような研究を行なっているのですか。

菊池先生: 学生は、言葉あるいは言葉を使用して行う行動をコンピューターでアプローチしていきます。アプローチは大きく3つの方法があります。

アプローチ1「言葉をコンピューターで捉える」

菊池先生: 1つは、「言葉をコンピューターで捉える」。例えばお笑いだと、芸人の言葉で笑いを起こしています。その笑いを起こす仕組みを言葉の面からたくさんデータを集めて解析します。他には、それこそAさん達がやっているような声を出す仕組みをコンピューターで捉えて解析することもしています。

ゼミ生A: 私は人がどのように声を発しているのかを研究しています。つまり、言葉を捉えるという中でも音声に焦点を当てています。私の研究はMRIという身体の中を写すことが出来るものを使用しています。MRIで喉のあたりを映すと、舌の動きをデータとして使用できるようになります。そのデータを科学的アプローチで分析しています。

MRI画像

ASAI, Takuya; KIKUCHI, Hideaki; MAEKAWA, Kikuo. Motion detection of articulatory movement with paralinguistic information using real-time MRI movie. In: 2019 22nd Conference of the Oriental COCOSDA International Committee for the Co-ordination and Standardisation of Speech Databases and Assessment Techniques (O-COCOSDA). IEEE, 2019. p. 1-6. (Best Student Award)

アプローチ2「コンピューターで言葉を良くする」

菊池先生:2つ目のアプローチは、「コンピューターで言葉を良くする」。コミュニケーションスキルをイメージするとわかりやすいと思います。皆さんが身につけたいと思う話すスキルっていろいろありますよね。就職活動の面接で好印象を持ってもらいたいとか、リーダーシップを発揮したいだとか…。いずれも言葉によるコミュニケーションスキルが期待されるものです。そのような場面を対象にデータを集めて分析します。そうすると上手な人はどのように話しているのかが分かってきます。

所祭委員:コミュニケーションの円滑さなどに繋がってくる研究ですね。

菊池先生: そうですね。円滑もその一つだし、リーダーシップが高く評価されるような話し方や政治家の話し方などさまざまですね。 あと、このアプローチで特徴的なのはVRを使用していることです。VRゴーグルをつけると目の前にたくさんの観衆が現れて自分の話を聞きます。もし自分が上手に話すと観衆は自分の話をじっと聞きますが、下手だと段々飽きてきて腕を組んだり伸びをしたりします。この研究テーマも多くの学生がやっています。

アプローチ3「コンピューターに言葉を持たせる」

菊池先生: 3つ目のアプローチはBくんがやっている研究ですが、「コンピューターに言葉を持たせる」というものです。Siriやスマートスピーカーのように少しずつ言語能力を持つコンピューターが登場してきていますよね。

所祭委員: 人工知能のようなものですね。

菊池先生: そうです。まだまだコンピューターの言語能力は低いかもしれないが着実にレベルは上がっています。

学生B: コンピューターに言語能力を持たせるということは、人間とコンピューターが対話できるようにするとも言えます。 人とシステムの対話は大きく2つに分かれています。一つは何かしら目的があるような対話です。例えば、Siriに「音楽をかけて」と言うような対話。これは結構実用化が進んでいます。 もう一つは目的を持たない雑談対話です。これを人とシステムの間で実現しようとしています。雑談対話は菊池ゼミや同じような研究をしている界隈で近年ホットだと感じています。菊池研究室においては、例えば「そうなんですね」などの相槌を打つだけでなく、「私も一時期ハマってた」などシステム側からも自己開示するような対話ができるようにするとか。他には、何かしらのユーモアを返すシステムを実現できるようにする研究なども行なっています。

所祭委員: 研究内容をお聞きしていると、プログラミングがメインに感じました。私はプログラミングが全くできないので、プログラミングと聞くと怖気付いてしまいます…。菊池ゼミに入る学生は最初からプログラミングが得意な人が集まるのでしょうか。

学生B: 必ずしもそうではなく、プログラミングを手段として使用する学生もいればそうでない学生もいます。割合としては半々くらいです。私はプログラミングをメインとした研究をしているのですが、学部1・2年生の頃からバリバリできたかというとそうではないです。どちらかというと研究室に入って本格的に学ぶようになりました。

学生A: 私も学部3年でゼミに入ってからプログラミングの勉強を始めました。まだしっかり分かっているというわけではないし、怖気付いていた部分もありました(笑)。個人的には留学と同じようなものだと思います。英語が話せなくても英語圏に行って過ごしたら段々英語が話せるようになるみたいな。プログラミングも同じで、分からなくてもやっていたらなんとなくできるようになっていくと思います。

所祭委員:この分野で研究する中でやりがいに感じたことなどはありますか。

学生B: 一つはシンプルにプログラミングが楽しいことです。 あとは、この分野でのコミュニティができていくことです。具体的にはハッカソンやKaggleなどの機械学習を使って競い合うコンペがオンライン上で開かれているのですが、それらの界隈で知り合った人と意見交換をしながら技術を研鑽しています。研究の側面で見ると、研究の成果を発表したり自分の研究について他の研究者と議論ができたりする点でやりがいを感じます。

学生A: プログラミングは最初とても難しいのですが、少しずつやって最後に「よし、動いた!」ってなるのが一番分かりやすいやりがいだと思います。研究的な側面だと、先行研究と自分の研究を比較して良くなった点を見つけたりオリジナリティーを感じられたりした時に嬉しいと感じます。

菊池先生: 一つは言語を対象としているということで、言葉を面白がれるということがあります。 もう一つは私自身学生の頃、Bさんがやっているようなシステムとの対話を研究していました。当時は音声認識も発展していなかったのですが、それでもなんとか対話システムを作って「将来はこれが標準になるんだ」っていう未来を想像していました。それが20年経って本当に市場に普及し始めてきて身近になってきた。 このようにいろんなことがいつか実現して普及していく。そんな未来につながる研究をしていると思えることがやりがいです。

ゼミの雰囲気や活動について

所祭委員:次にゼミの雰囲気や活動について伺っていきます。

学生B: 先生は学生同士が議論することを重視されています。初めて菊池先生とお会いしたのはゼミ選抜の時です。面接というと質問に答える形式が多いとは思いますが、菊池先生の面接では双方向に議論することが主でした。お題が一つ用意されていて、それについて先生と議論します。ゼミに入ってからも、活発に議論ができるような雰囲気を感じています。

学生A: 基本的に、先生は学生自身がどう考えているかを大切にしているように感じます。研究も自分のやりたいことができるという点で自由度が高いです。いい意味で盛り上がっている研究室だと思います。

菊池先生: やはり、議論を活発に行なっている印象があります。ただ、最近はコロナの影響でZoomでの活動が多くてなかなか難しい部分もありますが、学生が研究室に入れ替わり立ち替わり訪れて教え合ったりしています。 あとはBくんも中心となって行なっていますが、有志の学生が集まってハッカソンなどのプログラム開発のコンテストに参加しています。自主的に活動していていい伝統だなと思います。

所祭委員:他学年との交流は勉強会や有志でのコンテストへの参加などが主ですか。

菊池先生: その他にもグループミーティングを行なっています。研究室の学生を似ている研究テーマごとに6つ程のグループに分けて、グループ単位でミーティングを行います。グループは学部生から院生までいるので縦の繋がりもできます。

所祭委員: このような活動をしているゼミは初めて聞きました。多くのゼミはコロナの影響で他学年と繋がりが希薄になっているように感じます。他に、このような状況下で工夫していることはありますか。

菊池先生: 挑戦したものの一つにVRがあります。VRデバイスを学生1人1台配って何度かVRゼミをしました。ただ、やっぱり対面の代わりにはならなかったですね(笑)。他にもいろいろやりましたが、試行錯誤中です。 これから挑戦してみようと考えているものは、今までは1人1つの研究を行なっていたのですが、メイン研究テーマとサブ研究テーマを持ってもらうことです。他の人のメイン研究テーマをサブ研究テーマにしてもらいます。つまり他の人のお手伝いみたいな。そうして、メインの人が1人とサブの人が2人で一つの研究を行なうことでより議論が活発になると考えています。

ゼミに興味がある学生に向けて

所祭委員: ゼミに興味がある1年生、2年生に向けてお話を伺っていきます。学生のお二人はどうして菊池ゼミに入ったのですか。

学生A: 研究の自由度が高いことも理由の一つにあります。研究だけではなく、研究室での過ごし方もとても自由です(笑)。対面での活動が主だったときは鍋パーティなどもしていました。 あとは、私は菊池ゼミの先輩方と一緒にTAをしていたことがあります。当時、先輩方にとても仲良くしていただいて、「このゼミだったら楽しくやれそうだな」と感じたので入りました。

学生B: 僕が所属するゼミを決める上で、人工知能がキーワードの一つにありました。人工知能の研究ができるゼミはいくつかあるのですが、研究にしっかり取り組んでいると感じたのが菊池ゼミでした。 実際入ってみても、とても研究熱心なゼミだと感じています。「卒業するためだけの研究」ではないですね。

菊池先生: まさに「昔ながらの研究室」って感じです。研究室にはベッドや冷蔵庫、シャワールームもあって寝泊まりできます(笑)。あとは防音ブースもあって、研究のために使用するのももちろんですが、楽器を弾いたり面接練習をしたりと学生が好きに使用しています。

所祭委員: どのような学生が菊池ゼミに向いていますか。

学生A: 菊池ゼミには活発に意見を言う人が多いですが、もともと私自身そんな積極的な人ではないです(笑)。最初は大変だとは思いますが、ゼミに入ってからだんだんディスカッションにも慣れていくので大丈夫です。ディスカッションに自信がなくても研究を頑張ってみたい人であれば向いていると思います。

菊池先生: 最初は人見知りでも全然いいんですよ。ゼミでメンバーと一緒に活動したり議論したりしていく中で少しずつ慣れていきます。

学生B: そうですね。研究をしっかりやりたいと思っている人は向いていると思います。菊池ゼミは真面目な人を茶化さないです。研究者として何かしらの爪痕を残したいと感じている人は向いていると思います。

所祭委員: 菊池ゼミを希望している学生に向けて何か伝えたいことはありますか。

菊池先生: 自分の限界を決めないで欲しいです。チャレンジしてみてください。「こういう風になりたい」とか「こういう社会にしたい」とかの思いが大切です。私は発射台だとしたら学生の皆さんはロケットになります。ロケット自身がエネルギーを持っていないと発射台の私にはどうにもできないです(笑)。皆さんには積極的にチャレンジするエネルギーを持っていて欲しいです。

学生B: プログラミングができることは学生にとってもメリットになります。卒業するためだけじゃなくて、エンジニアとして知識を身につけたいと思っている人には菊池ゼミをお勧めします。

菊池先生: 学生の就職先は、大体3割がエンジニア、2~3割が進学、残りは総合職や営業職など様々です。

学生A: このインタビュー記事を読んでいる人は「このゼミめっちゃ勉強するじゃん(笑)」って思うのではないでしょうか(笑)。確かに、勉強をなるべくしたくない方にとっては厳しいゼミかもしれないです。でも、そんなに怖気付く必要はないですよ。入ってからでもプログラミングの技術を身につけられるし、意見を言うことにも慣れていきます。是非チャレンジしてください。