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生活支援工学研究室
(巖淵研究室)

#ICTやAIを用いた次世代バリアフリー

障害のある人や高齢の人など,様々なバリアを抱える人々の生活に役立つICTやAI,IoTを利用した支援技術の研究開発を行っています。

研究内容について

所祭委員: 生活支援工学ゼミということですが、どのような研究活動を行なっていますか。

巖淵先生: 私達は、障害のある人や高齢の人など、困難を抱える人のテクノロジーを利用した生活支援に関する研究を行っています。例えば、みなさんが使っているスマホが役立ちます。今では人の目よりも優れたカメラが備わっていて、見ることや記録しておくことを助けてくれます。特に若い皆さんは、スマホは生活に欠かせないと、日々便利に利用しているのではないでしょうか。こうしたすでに身の回りにあるテクノロジーを教育や福祉にどのように活用できるかをゼミ生達と一緒に考えます。テクノロジーは手段に過ぎないけれど、困難を減らし、生活を良くすることに役立ち得る。障害だけでなく、この国に暮らす外国からの人やジェンダーに関連して不自由を感じている人など、社会生活の中で様々な人が困難を抱えています。こうした多様な困難の軽減にテクノロジーがどう活用できるか、私達のゼミでは、ちょっと便利だよねっていうところから、様々な人が本当にしたいことが実感できるような社会をどう作る??という議論ができればと願っています。

所祭委員: ありがとうございます。ちなみにその研究は全体で行われているのですか?それとも、個人でそれぞれ研究しているのですか。

巖淵先生: 今お話したことを全体の目標として共有しながら、さらにそれぞれのゼミ生が個別のテーマで研究を行なっています。

ゼミ生: 私は医療的ケアが必要な重度・重複障害のある子どもの支援に向けた研究を行っています。彼らの多くが、体調の不安定さの困難を抱えており、体調が変動する理由を知り、安定に向かえればと願っています。そこで「PINE」というツールを開発しました。「PINE」は決められた時間にLINE botが状態を尋ねてきて、利用者は表示された選択肢をタップするだけで記録できます。当初、単独のアプリとして作成したところ、それを決まった時間に開いて記録をとることが面倒という声が利用者であるご家族から聞かれました。そこで皆さんがよく利用している「LINE」をベースにしたシステムに改良して自動的に記録が促されるようにしたところ、抵抗感無く記録活動を続けてもらうことができました。回答はGoogleのスプレッドシートに記録され、そのデータから体調の変動の様子が分かるようになっています。

所祭委員: 障害のある本人に加えて、周りの人を支援することも大事なのですね。目に見えない変化を可視化することによって家族に安心も与えられると思います。

ゼミ生: そうだと思います。さらに、スマホやタブレットなど、身の回りにあるテクノロジーで簡単にできるということで、より身近にできる時代になってきていると思います。

巖淵先生: 「LINE」だったらすでに使っているし、やってみようかなっていう最初の心理的ハードルが低いことが大切です。体調の不安定さと共にそれに関連した変化には長期で記録を取ってみて初めて気づくことがたくさんあるんです。しかし、記録すること自体は面倒なんです。そこで、テクノロジーで自動化し、さらに得られたデータを可視化することで、「今週は調子が良さそう」と予測できます。そうすればもっと良い反応を積極的に引き出してみようか、と子どものことを知る機会を増やすことができるのではないでしょうか。テクノロジーが記録することの良さは、人の目が届かない瞬間でも僅かな反応に気付いてくれるところです。「多分こうかな…」と不安を抱えているご家族と共に、テクノロジーで反応を可視化することで「感じていらっしゃったことは合っていたよ」と確認し、次につながるアプローチを考えていくことも可能になります。客観的根拠からどのような関わり方が効果的であるかを理解していくことが大切です。みなさんが学ばれる統計や実験デザイン、現場でとても役立つんです。今ある出来事を客観的に説明することは、心理的にも、物理的にも大きな支えになりえますし、傾向から未来を予測できるのなら、自信を持って新しいことに挑めるようになります。発達に困難を抱えている子ども達にもそういう時間を増やしていけたらいいなと願っています。そこでテクノロジーが果たせる役割は小さくないし、「伴走者」みたいなものかな、しかし、特別なものではなくて、スマホでもできるという身近さも含めて研究しています。

所祭委員: 似たようなもので、月経を記録するアプリも普及していてかなり便利だと思いますし、実際予測できることの安心感もあります。

巖淵先生: そうした役立つツールが個人で簡単に利用できるようになってきましたね。ゼミ生とも言っていたのは、この先、さらに簡易にしていくためには、自動化が欠かせないということ。やはりアプリやLINEで記録をするといっても面倒なんですよ。落ち着いてお茶を飲む暇のないご家族に記録作業を強いることは避けなければならない。だからスマホすら持たなくていい、ルーチンとして行う記録作業は、放っておいても機械が行ってくれるようになればと願っています。こうした技術は、今まで福祉というより医療の現場に限られていたかもしれませんが、いざ私達の手元でも利用可能となった時、どう活用するかを一緒に考えていけるゼミにできたらと思っています。

ゼミの雰囲気

所祭委員: ゼミの雰囲気や特徴など、教えていただきたいです。

ゼミ生: たまに私がトンチンカンな質問をしてしまうんですけど、それも否定せずに聞いてくださって質問のしやすい雰囲気があります。なのでのびのびと研究に取り組めます。研究室自体は、同期と自由活発な議論ができるような温かい雰囲気ですね。

巖淵先生: 人科やゼミを各自が新しいアイデアを持ち寄って共有・発展させることのできる「サロン」のようなところにできればと願っています。学生の皆さんはもちろん、大学に関わる人々が、この場をうまく活用して、得た力を外で発揮してもらえれば素晴らしいと思います。例えば、障害に関わる支援の研究をしていて、ずっと大学に留まっていても何も生まれないと思うんです。やはり、外に出ていくことの大切さを皆に伝えたいし、求めたい。本を読んでいる時点ではまだ何も返せていない。本を読むことが悪いわけではなくて、現場に足を運んで得た情報で世の中にこんな面白いことがあるのだと議論をしてもらいたいと思っています。

所祭委員: 現場で体感しないと得られないものもあると思いますが、コロナ禍という状況での活動はどのような感じですか。

巖淵先生: 現在は活動の多くがオンラインになり、難しさを感じる部分もあります。しかし、コロナ禍でご家族と会えないよね、しょうがないよね、を理由に止めてはいけない部分がある気がしています。コロナ禍になる以前から、障害のある人の中には、在宅で働きたいけど会社から難しいと言われてしまい困っている人が多くいました。コロナ禍によって、1つのスタンダードとして在宅勤務が推進される時代に状況が一気に変わりました。このように従来からの慣習によってできないと決めつけられてしまっていることが結構あることに気づきます。ですから、コロナ禍が過ぎても支援の仕方や働き方など本質を見極めたいと思っています。学生としてはオンライン生活をどう感じますか?

ゼミ生: ご本人達にお会いできないというのはやはり辛い部分ですよね。

所祭委員: そうですよね、ご本人達との研究でもありますから。ちなみに生活支援工学ゼミにはどのくらいの学生がいらっしゃるんですか?

ゼミ生: 現在、大学院生が2人在籍していて、学部生は各学年に5〜9人ほどです。

1、2年生に向けて

所祭委員: このゼミに入るために事前にやっておくべきことなどはありますか。

巖淵先生: まずは、思い立ったら現場に行くってことかな。ぜひいろんなことを体験して、こんなことを感じた、自分はこう思ったんだけどどう思う?って、周りと話して欲しいです。4年間大学で勉強して、いざ現場に入ったら驚き、悩むことが多くあると思います。例えば話せない人を目の前に私は何ができるんですか、と。テキストを開いてもどこにも答えが書いていないことが、現場ではたくさん待ち構えていますし、これからの時代、こうした新たな変化がますます増えていくように感じています。そんな時に活きるのが様々な経験の中で自ら考えてきたことだと思うんです。その実体験を持って、ゼミの2年間、自らの可能性を高める最適な場所として生活支援工学分野に挑戦したい、と思う人に来てもらえればいいなと思っています。

ゼミ生: やはり2年間という長い時間をかけてやるので後悔のないように色々学んで話を聞いて体験することですね。障害の分野でいうとGECに当事者の話を聞ける科目もありますし、支援ボランティアを募集していて実際に参加してみることも大学内でできるので大学内のリソースをフル活用して決めていただきたいなと思います。

所祭委員: 今の1、2年生に向けてメッセージをお願いします。

巖淵先生: とにかく他の人がやっていないことをやる!もし、思い浮かばなかったら、例えばコロナ禍が落ち着けば海外に行くのはどうでしょうか。否応なく自分を変えざるを得ない場に身を置く!って、素晴らしい体験になると思います。他には、あえて古い名品を手に入れるのもいいと思います。いわゆる「古き良き」ものに日々触れるってことですね。わざわざ壊れやすいものを手にしてみる。必要に応じて修理をすればなぜそのようなデザインであるか、愛着も含めてたくさん感じることがあると思います。他の人がいいと言うから買うのではなく、自分の感性に合わせて必死で貯めたバイト代をはたいて買ってみる。全く関係がない経験が研究や自らの進路に活きてくる事が不思議とあるものです。